第3局は横歩取り(△8五飛型)となった。
今シリーズここまでの2局は、羽生名人が序盤から積極的に仕掛けるも、竜王の冷静な受けと鋭いカウンターの前にあと一歩及ばなかった。本局もまた、後手の羽生名人が先に仕掛ける展開。封じ手以降△3三角と打ってからの攻めは細いように見えたが、意外と五月蝿い。

第1図、桂馬を取られて8筋を破られてはいけないので▲9五角はこの一手。△9四飛と飛車を隠居させて▲9六歩とすれば穏やかな指し方だが、竜王は▲7三角成! △同銀に▲6五桂の強襲。控室からも悲鳴が上がったという驚愕の一手だったが、先手の攻めがうまく続き、優勢となった。
後手も△2七銀から△6五桂で先手玉に迫ろうとするが歩切れもあって攻めが細い。
第2図(92手目)

先手が歩を7枚持っているのに対して、後手歩切れ。格言に従えば「歩の無い将棋は負け将棋」だが、後手は盤面と持ち駒で金銀6枚持っており、別の格言によれば「金銀6枚なら優勢」なのだそうだ。(この格言は棋譜コメントで初めて知った)
果たしてこの局面ではどちらの格言があてはまるのだろう。素人考えでは歩切れでは後手の攻めは細く、2二の地点に直射している飛車と香車を受け止める歩がないのは痛く、先手優勢にみえる。次に指された▲7八銀で先手受けきり、後は寄せるだけとみて、私は所用があったのでここで観戦から離れた。
ところが・・・
仕事を終え、PCの前に帰って中継を開いてみると
なんと渡辺が投了していた!
確かに「優勢」とはいえ、直ぐ終わるような将棋ではなかったが・・・どこで逆転したのだろう?
第2図から▲7八銀の受けに対してじっと△7五金と歩を補充したのが粘りある一手だったようだ。▲3五桂に貴重な一歩で△2三歩と傷口をふさいでみると、後手陣は堅陣で容易には寄らなくなっていた。まさに「一歩千金」だ。
そして111手目の▲2四歩が敗着だったようで、形勢が縮まっていたとはいえ▲6八桂ならば先手が良かったとのこと。しかし一手でガラッと形勢が変わるとは、将棋は恐ろしい。。。
「先手優勢」と勝手に判断して諦めて観ていた将棋だったが、今思えば、控室の形勢判断、将棋ソフトの数値に影響されすぎていたのかもしれない。そう考えると大いに反省しなければならない。将棋はそんなに簡単なものではない、最後まで諦めてはいけない、ということを教えられた一局だった。
連敗スタート、プラス直近の対戦成績1勝9敗と苦境に追い込まれていた羽生名人だったが、この勝利で息を吹き返したのではないだろうか。第4局以降流れが変わっていくだろう。渡辺羽生の頂上決戦を楽しみにしていた者としては、この番勝負簡単には終わらないでほしい。そして、ぜひ第7戦まで熱戦を繰り広げてほしいと思う。
↑梅田望夫さんの新刊略して「どう羽生」。Twitter上で盛んに宣伝されていました.
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