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「現代将棋の思想 ~一手損角換わり編~」

現代将棋の思想 ~一手損角換わり編~ (マイナビ将棋BOOKS)現代将棋の思想 ~一手損角換わり編~ (マイナビ将棋BOOKS)
(2013/01/23)
糸谷 哲郎

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現役の阪大院生でもある糸谷哲郎六段の処女作。

本書は一手損角換わりの概論書である。一手損角換わりを理論的に考察することを目的としている。なぜ理論化にこだわったかについては第2章第1節に書かれている。要約すると、一手損に詳しくない人、指したことがない人にも分かりやすく伝えるためである。理論は感覚よりも大雑把にしか理解することができないが、言語化される分共有しやすい。また、理論を学ぶことでその戦法の感覚を体得しやすくなる。

理論書なので、手順の枝葉末節よりも戦法の思想を説明することに重点を置いている。

一手損角換わりの本でありながら、第一章ではゴキゲン中飛車や横歩取り8五飛の話が出てくる。現代の後手番戦法の中での一手損角換わりの立ち位置を説明するためである。ここ数年の将棋界では後手番の苦しさが語られることが多い。例えば渡辺竜王は「後手は後手だから何をやっても苦しい」(将棋世界2013年1月号.p144)と述べている。「何をやっても苦しい」中でどの戦法を選ぶのかがプロ棋士の悩みとなっている。

一手損角換わりは2手目△3四歩で始まる後手番戦法だが、他の作戦のように玉の堅さを求めることができない。その代わりに、先手の手詰まりを目指した戦法である。

ここまで説明して、ようやく第2章から一手損角換わりの解説に入る。以下各章の内容をまとめておこう
<第2章>
第2章では初期の一手損角換わりの歴史を概観する。初期は▲7六歩△3四歩▲2六歩△3二金▲7八金△8四歩▲2五歩△8八角成の出だしが多かった。ここから相腰掛け銀に組んだ際に△8四歩型が△8五桂の余地を作っている分得とされていた。そこで先手は手得を生かすために棒銀、端歩位取り右玉、早繰り銀を試みた。この中で最も有力とされる早繰り銀は第3章で解説する。

<第3章>
第3章は先手の早繰り銀が△8四歩+△3二金型一手損を駆逐した歴史。△8四歩型には▲7九玉型が先手の決定版となった。下図(△5五銀打)はタイトル戦でも指された将棋(例:▲羽生vs△木村の第80期棋聖戦第2局)で数年前は何度も見かけたが、その後パッタリと消えてしまった。それは本章にもあるように△5五銀打が無理という結論が出たからだ。
糸谷一手損003

<第4章>
△3二金+△8四歩型が苦境に陥った後手は△3二金+△8四歩不突を試すことになった。ここでは糸谷が一時期指していた後手の早繰り銀が出てくる。この形は次に紹介する△8八角成型(4手目角交換)が流行ったことで未だ研究が進んでいない。著者曰く「△8八角成と△8四歩突き型の間に挟まれてしまってどうにも中途半端な感が否めない」戦型である。

<第5章>
第5章、第6章では4手目角交換(△8八角成型)を解説する。この作戦の狙いは△3二金を保留すること。ここでも「後回しにできる手はできるだけ後回しにする」という現代将棋の思想が反映されている。5章では4手目角交換の一変化であるダイレクト向かい飛車を解説する。

<第6章>
第6章は△3二玉型の一手損角換わり。昨年の竜王戦七番勝負▲渡辺△丸山戦でも登場した最新形だ。

糸谷一手損002

図(△8五歩まで)は第25期竜王戦七番勝負第4局と同じ局面。ここで渡辺竜王が指した▲1五銀は△4五角▲3八金△2二銀で後手良し。よって▲5五歩と突くことになる。△8五歩に▲5五歩と突いた局面は現在一手損角換わりで最も研究されている局面である。この△3二玉型はまだまだ探られ始めたばかりで未解明の部分が多い。

巷ではこの本は難しいという評判だ。その理由の1つとして著者の文章が硬く、古風な表現が多いことが挙げられる。確かにそうだと思うが、文章そのものは理路整然としていて分かりやすかった。

一通り読めば一手損角換わりの全体像を掴むことができる良書だと思う。また、第1章から第2章第1節「理論化の意義と方法」は一手損角換わりに興味がない人にも重要な示唆を与えてくれるはずだ。

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[ 2013/02/09 17:00 ] 書籍レビュー | TB(0) | CM(0)
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